進学先の指導教員と,これから読む本を決めるミーティングをした.「研究者というのは一度テーマを決めたら数年は変えないので,慎重に決めましょう」として,「いくつか候補を挙げるから,読んでみて,2つ以下までは絞ってきてください」とのことだった.
面談の次第
まず Nualart (2018) Introduction to Malliavin Calculus を読み進めるのが一つの選択肢であるとした上で,「確率過程の漸近論をやりたい」と伝えたら,
- ① Asymptotic Statistics (van der Vaart)
が候補に上がった.Nualartを読んでいた場合は抜けが出来るかもしれないが,van der Vaartだと無難だろう,と.だが「これはやれば出来る内容で,自分でも読めちゃう」という話になり,「あと何個か候補を挙げるから,実際に読んでみて,どれをやるか決めてもらいたい」として,「これを読んでおけば潰しは効くが,もっと踏み込んでどんな研究がしたいのか?」という話になった.
ちなみに一瞬 Statistical Estimation (Ibragimov Has’minskii) について意見を訊いたが,「モチベーション中心の書き方で,証明の書き方も洗練されておらず,セミナーでは読みにくい」と言っていた.
「確率過程のメソドロジーを使った漸近論」テーマにして,いくつかおすすめを訊いたら,まず,
- ② Ivan Nourdin and Giovanni Peccati (2012) Normal Approximations with Malliavin Calculus Cambridge Univ. Press.
- ③ Aad van der Vaart and Subhashis Ghosal (2017) Fundamentals of Nonparametric Bayesian Inference Cambridge Univ. Press.
- ④ Alexei M. Kulik / Oleksii M. Kulyk (2018) Ergodic Behavior of Markov Processes: With Applications to Limit Theorems De Gruyter
- ⑤ Carl Edward Rasmussen and Christopher K. I. William (2005) Gaussian Processes for Machine Learning MIT Press
が紹介された.
最終的には①,④,②をもっとも推してた.
続いてPark et. al.を話題に出したら,「確率過程をやりたいのなら……」と
- ⑥ Yury Artemovitch Kutoyants (2004) Statistical Inference for Ergodic Diffusion Processes
「漸近展開もやりたいのなら……」と次を出してくれた
- ⑦ Grigorios A. Pavliotis and Andrew M. Stuart (2008) Multiscale Methods: Averaging and Homogenization, Springer New York.
僕の所感
- ①普通に一刻も速く読みたい.
- ②これは吉田先生との講究でも参照してた.読みやすいのは知ってるし面白そうではあるが,正規近似に特別な興味はまだない.
- ③無限次元模型(ノンパラ),Bayes,漸近論という,僕が大学院で学びたい3大項目をカバーしているので,舵を取りやすいかもしれない.単純に鎌谷先生の下だし面白そう.同じvan der Vaartだし,①を自分で読む相乗効果もありそう.
- ④Markov過程とそのエルゴード性を統一的に扱って,その後Markov過程の汎関数に対する極限定理を与えているすっごい簡潔に書かれた本で,いずれは絶対に通読したい.これも最高の本ではある.
- ⑤普通に興味があるが,どうしても他と比べると優先度は劣るよなあ.
- ⑥めっちゃ吉田グループっぽくてやりたい.が,増田先生の研究にあまり興味が無いように,セミマルチンゲールにあまり興味が持てない,主な応用先は金融じゃないか.
- ⑦めっちゃ面白そうで,平均場ゲームに近い内容だし,統計学出身の人じゃないから,新しい発想を与えてくれる気がする.絶対にいずれ読みたいが,今じゃない気がする.
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